デトバ刺繍との出会い
2012年 02月 12日
ハンドコミュニケーションとも言うべき、言葉を超えた交流を求めて、各国の手仕事を訪ねる旅をしています。
2007年5月のホビーショーには、スロバキアのかぎ針刺繍「デトバ刺繍」の伝承者イベタ スミレコバーさんを招待しましたが、今回は彼女との出会いをご紹介します。
ヨーロッパ伝統工芸の職人を日本に招待したいとの思いで、ドイツ、オーストリア、スロバキアへ職人探しの旅をしました。2006年9月のことです。さまざまな取材先をあたりましたが、伝統工芸の世界も次第に分業化が進んでおり、材料調達から仕上げまで行っている元来の職人はなかなか見つかりませんでした。
そうこうしているうちに私たちはかぎ針を使った刺繍が継承されているスロバキアのデトバ地方を訪ねます。デトバは、車で5分も走れば通り抜けてしまう程の小さな街。
住宅が並ぶ広い通りに、刺繍を飾った小さなウィンドウを見つけます。今思うと、ウィンドウは通りから離れていましたし、走る車窓からでしたので、見つけたのは幸運でした。
土曜日で店は閉まっていましたが、ウィンドウに書かれた電話番号にかけてみると、オーナーが来るということになり、暫らくしてやってきたのがイベタさんでした。
イベタさんは、おかあさん、おばあさんもかぎ針刺繍をやっていたというデトバ刺繍の伝承者。
お店には刺繍や工芸品が並べられ、奥の部屋は小さなミュージアムになっていて、スロバキアの古い家具などとともに、刺繍が施されたたくさんの衣装や生活雑貨が展示されています。
さっそくかぎ針刺繍の技術を見せてもらいました。布にかぎ針を刺して下糸を引っ掛けます。
引っ掛けた糸をループ状に残して、再び下糸を引っ掛けてループに潜らせます。
デトバ刺繍はスロバキア独特のかぎ針刺繍で、イベタさんは刺繍技術の教室で教えることも多いそうです。
気さくな笑顔、確かな技術、そして、おばあさんの代から受け継いでいる刺繍の伝統。刺繍や民族衣装という文化を、自分の技術をもって受け継いでいこうという思いが、言葉の壁を越えて、はっきりと伝わりました。
日本のホビーショーに来てくれるかと尋ねると”行きます”と迷わず答えたイベタさん。こうして、スロバキアのデトバ刺繍を日本に紹介することになったのです。
素朴なデトバ刺繍のかぎ針。
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